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『ドドイツ万華鏡 いま伝えたい小粋な言葉あそびの世界』(玉川スミ/くまざさ出版社)感想レビュー 古典都々逸からアンコ入り都々逸まで選び抜かれた213句

2020年11月22日日曜日

都々逸 本の感想

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『ドドイツ万華鏡 いま伝えたい小粋な言葉あそびの世界』

1999/12/1発行『ドドイツ万華鏡 いま伝えたい小粋な言葉あそびの世界』(玉川スミ/くまざさ出版社)。

ドドイツ万華鏡―いま伝えたい小粋な言葉あそびの世界

玉川スミさんが幼い頃から現在までの約80年間に教わった唄、古典の中から選んだ唄、創作した唄などから選ばれた都々逸がまとめられた一冊です。この本だけで約213句の唄を楽しむことが出来ます。

玉川スミさんの経歴

高座の人気者。三歳の春、中村文丸の芸名で女流歌舞伎・市川牝丹一座にて初舞台。役者、漫才界をへて、三味線漫才で独自の芸風を確立。都々逸を唄う数少ない芸人として寄席やラジオなどで活躍した。1971年文化庁芸術祭賞優秀賞受賞。1991年勲五等宝冠章受章。2002年松尾芸能賞・特別賞受賞。 (1920年7月17日 - 2012年9月25日 92歳没)

内容

ようこそ、都々逸の世界へ

都々逸というジャンルに注目してくださった。うれしいじゃござせんか。

ひさしぶりだね お前の三味で 粋な都々逸 スミの喉

始まりとしては最高の一句。

上席:おスミの古典都々逸遊覧船

三歳から鍛えられたスミさん「これから辛いことがあっても、やがては一人で生きていかなければならないのだから、芸にしろ何にしろしっかりと覚えておきなさい」と牡丹一座に叩き込まれます。

そんなスミさんの経歴をお話してくれつつ「江戸から明治にかけての都々逸」57句の紹介が始まります。

苦労するのが 高嶺の雪よ とげぬ思いに 身をこがす

よその夢見る 浮気な主に 貸して悔しい 膝枕

苦労するのは そなたの勝手 愚痴を承知で 深くなり

深くなるほど 人目を忍び 目も口ほどに 物をいう

わざと欠伸を してみる辛さ 悲しい涙を かくすため

次に唄をはさみつつ「都々一坊扇歌(どどいつぼうせんか)」の紹介です。

・都々一坊扇歌辞世の句

都々逸も 唄いつくして 三味線枕 楽にわたしは 寝るわいな

・都々一坊扇歌終焉の地(岩岡市にある国分寺)にある扇歌堂と墓、歌碑

たんと売れても 売れない日でも 同じ機嫌の 風車

画像:ウィキペディア(Wikipedia)より

・都々一坊扇歌生誕の地(磯部町)にある扇歌の碑

磯部たんぼの ばらばら松は 風も吹かぬに 気がもめる


さらに「よしこの節」集の紹介が続きます。

「よしこの節」とは上方を中心に流行した七七七五の唄で都々逸のルーツとなるものです。「よしこの節」は四国に伝わり徳島の阿波踊りでうたわれる「踊るアホウに見るアホウ、同じアホなら踊らにゃ損そん」を生み出します。

この本で紹介されるのは江戸時代の歌舞伎役者によってつくられた23句です。

惚れていれども まだぬしさんの こころしらねば あかされぬ(中山南枝)

嘘じゃおかんぜ その手はくわぬ だまし文句に こりたもの(賽川延三郎)

中席:おスミの都々逸十八番

スミさんの修行の事から柳屋三亀松(やなぎやみきまつ)さんの事について語られつつ、スミさんの十八番の都々逸56句です。

だますきつねを だましてやろと だましにかかって だまされた

力づくにて きれないものは 固く結んだ 縁の糸

そして、「アンコ入り都々逸」が15句。「アンコ入り都々逸」とは普通の都々逸の間に、新内や端唄、長唄、流行歌、芝居のセリフなど思い立ったフレーズなどを折り込んで唄うものです。

思い切れよとは 昔のことよ
 一目逢わねば千日の思いに
 わたしやわづらうて(清元)
思い切られる 義理かいな

下席:おスミの都々逸2000年問題

この本が発行されたのが1999年12月のためか「2000年問題」という懐かしい文言がタイトルに含まれています。

ここでは今後都々逸を作る人へ向けての都々逸の作り方が書かれています。スミさんらしく技術的な説明というより、「身近なものに目を向け自由なスタイルでのびのびと楽しんで」といった心構えを説く章と言った方がいいかもしれません。

そんなスミさんが選んだ58句。

父ジャイアンツ 僕はドラえもん 仁義はいらぬ 電波がピ

飲めば飲むほど やる気がわいて やった気になり 高いびき

まとめ

都々逸の基本は、即興で自分で文句を作り、相手の方に聞いてもらい、あるいは読んでもらい、喜んで頂くこと。そして唄うときも十人十色。その人なりの節回し、その時の気持ちのこめ方で自由に歌えば、それでいいのです。同じ文句でも、唄う人によって雰囲気が変わるのが都々逸というものです。

ドドイツ万華鏡―いま伝えたい小粋な言葉あそびの世界

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