「五七五で毎日が変わる!俳句入門」
「五七五で毎日が変わる!俳句入門」(堀本裕樹 (監修)/朝日新聞出版)です。俳句入門 五七五で毎日が変わる!
1年(12か月)の月ごとにお題と俳句の決まりごとを定めて解説されています。マンガが間にはさまれており読みやすいです。
内容
各章には、そのお題にあった句が複数掲載されています。そしてそれぞれ、<修正前>の句と、それをどのような理由でどう直すかの説明、そして<修正後>の句が書かれています。<修正前>夏浅し 人立ち寄らぬ 土産店
季語は「夏浅し」。夏に入ってからそれほど日がたたず、木々もまだ新緑のころをさします。どちらかというと明確なイメージを与えてくれない季語のため映像が浮かび上がりづらくなっています。
季語選びで重要なことの一つは「明暗のコントラスト」。「人立ち寄らぬ」は暗いイメージなので、あえて、明るいイメージの季語を持ってくるとコントラストによって句が鮮明になると考えられます。
<修正後>風薫る 人立ち寄らぬ 土産店
修正前と修正後を見比べることで印象の違いを感じることが出来ます。
また、俳句で大切なルールの説明が各章ごとになされています。ルールに合った代表句が提示されているため、分かりやすい内容となっています。
4月:桜咲く公園へ [五七五の説明]
俳句は五七五の十七音で構成されており、最初の五音を「上五(かみご)」、まんなかの七音を「中七(なかしち)」、最後の五音を「下五(しもご)」と呼びます。五七五の句を定型句といい、「字余り」「字足らず」、五七五の切れ目をまたがる「句またがり」を「破調」と呼びます。菜の花や 月は東に 日は西に(五七五の定型句)
赤い椿 白い椿と 落ちにけり(六七五の字余り)
虹が出る ああ鼻先に 軍艦(五七四の字足らず)
蛙の目借時 テナント募集中(句またがり)
伸ばす音「-(音引き)」や小さい「っ」の促音は一音に数えます。つまり、「デート」は三音、「切符」も三音です。しかし「ゃ」「ゅ」「ょ」などの拗音は、前につく字と合わせて一音になります。つまり「みゃく」は二音です。
さらに、この章では文語体を使いこなすための四段活用~ラ行変格活用の表が載せられています。
5月:神社で緑に囲まれる [季語の説明]
季語は春夏秋冬+新春の五分類となります。俳句にとっての季語は要のため、うっかり二つ以上入れてしまうと、季語同士がぶつかり合ってしまうため、まずは一つの季語を十分に生かした句づくりを目指すとよいでしょう。もちろん、複数の季語が入る「季重なり」にも名句は存在します。季語を知るため、歳時記を手元に置き読むことを勧めています。
6月:城とあじさいを満喫する [切字の説明]
切字の三つの代表的な要素は「詠嘆」「省略(解釈を読み手にゆだね想像を刺激する)」「格調」です。 そして、三大切字は「や」「かな」「けり」。「や」で詠嘆、驚嘆を表します。「かな」は余韻。「けり」は断定的で決然とした響きをもちます。また、「切字十八字」として「し」「ぞ」「か」「よ」「もがな」「ぬ」「らん」などが存在します。
秋深き 隣は何を する人ぞ
7月:海で夏を感じる [省略の説明]
省略できる言葉は省略し句をスッキリまとめることの大切さを説明しています。句がただの説明や報告になっていないか文字数を無駄にしていないか確認しましょう。8月:川には秋の気配 [一物仕立ての説明]
「一物仕立て」とは一つの素材に焦点を当てる事です。ポイントは一つの季語を主役にして詠む、もしくは、季語以外の一つの素材を主役にすること。9月:庭園で月を愛でる [取り合わせの説明]
ここでは上記「一物仕立て」とは違い、季語と季語ではない事柄を組み合わせて詠む方法が説明されます。意外な取り合わせを楽しむことで深みのある句を作ることが出来ます。秋風や 模様のちがふ 皿二つ
この句では秋の季語「秋風」と「皿」を組み合わせています。冷気を帯びていく秋風と冷たい皿の距離感。さらに「模様のちがふ皿二つ」は心の行きちがう作者と両親の象徴とも言われています。
10月:色づきはじめた山に登る [比喩の説明]
比喩には「直喩」と「暗喩」の二種類があります。「直喩」は「~のようだ」と使う事、「暗喩」はかけはなれたものを「AはBである」と表現することです。また、人間以外のものを人間の動作や振る舞いに例える「擬人法」も比喩の中に入ります。11月:酉の市へ出かけよう [数詞の説明]
数詞は、場面は状況を具体的に伝える説得力のある技法です。だからこそただの事象の説明に陥らないようにすることが大切となります。そして、使う数字に必然性があることが重要なポイントです。12月:街はクリスマス [リフレインの説明]
同じ言葉を繰り返すことでリズムをもたらします。句の中で生きれば、繰り返す品詞、音数、回数などは問われません。鰯雲 ひろがりひろがり 創痛む
1月:お正月を詠もう [色の説明]
色を詠む時に気を付けたいのは、その色がすでに季語に含まれていないかどうかです。色の名前を入れずに色彩を浮かび上がらせる手法もあります。また、「海の色」「黄色い声」などのような表現方法もあります。2月:梅園に春が来た [表記の説明]
ひらがな、カタカナ、漢字などの表記を使い分けることで俳句の印象が変わります。俳句でカタカナを使うかどうかの是非はありますが、カタカナを使うと、軽い印象になることがあるので注意して使ったほうがよいとのことです。3月:エピローグ [挨拶句の説明]
人や場所を思って詠んだ句を挨拶句といいます。ここで説明した俳句ルールの説明以外に、吟行・句会の進め方や俳人プロフィール一覧なども掲載されています。
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