人生に役立つ 都々逸読本 七・七・七・五の法則
2015年発行の「人生に役立つ 都々逸読本 七・七・七・五の法則」(柳家紫文/海竜社)。人生に役立つ都々逸読本――七・七・七・五の法則
1ページにつき1~3句程度の都々逸とその紹介コメントが書かれています。約180ページの本ですので、1ページ2句程度とすると、推定300句掲載されていると思われます。
内容
はじめに
だれもが知っている都々逸の句として以下の3つから始まります。あっ、これ都々逸だったんだ、という感想を抱くくらい浸透している句ですね。立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は 百合の花
ざんぎり頭を 叩いてみれば 文明開化の 音がする
お医者様でも 草津の湯でも 恋の病は 治しゃせぬ
そうしてもう一つ。七・七・七・五のものとして紹介されているのがコレ。
どこの誰かは 知らないけれど 誰もがみんな 知っている
月光仮面の主題歌!
まさに、日本人の心に深く刻まれた七・七・七・五の言葉遊び。そんな感じでこの本はスタートします。
序章:知っておきたい名作都々逸 - 都々逸入門編 -
この章も名作都々逸が数多く紹介されています。トップバッターはこちら。惚れた数から 振られた数を 引けば女房が 残るだけ
私もこの句好きです。「残るだけ」のあたりに無念さが滲んでいますが、「惚れた数」と唄っているので、きっちり女房にも惚れているんだろうなぁと思わせてくれます。惚れて告白しまくって、ただ一人受けてくれた貴重な女性。それが女房。人生なんてそんなもの。でも全然悪くない。 そして、振った数が多い男より、振られた数が多い男の方が、悲哀とおかしみをにじませていて魅力的に感じてしまう。この句はそこをついている感じが好ましいです。
さて、他にも有名な都々逸が続きます。
立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は 百合の花
が、しかし、その返しとして、
立てば芍薬 座れば牡丹 今じゃ寝たきり ボケの花
このキツイ句が受けるのはどこだと思いますか?それは実は老人施設…とこの本では愛とおかしみを込めて記載しています。人生の面白みと深さを感じさせてくれます。
さらに、
いやよいやよと 言われてやめる そんなあなたが もっといや
の返しで、
いやよいやよと 言われてやめぬ そんなあなたが ストーカー
とても今風ですね。
<コラム>
この章のコラムでは、日本全国津々浦々の七・七・七・五を含んだ民謡が多数紹介されています。この民謡もたしかに七・七・七・五だという気づきがあり、都々逸の強さを感じます。このコラムだけでもこの本を読んだかいがあるなぁと思わせてくれます。
草津よいとこ 一度はおいで お湯の中にも 花が咲く(群馬 草津節)
第一章:七・七・七・五の恋愛指南
都々逸と言えば色恋。恋の都々逸が多数紹介される章です。さて、その中で面白いのを一つ。星の数ほど 男はあれど 月と見るのは 主ばかり
紫文さんが作ると…。
星の数ほど 女はいるが 星じゃ遠くて 届かない
「遠くて近いは男女の仲」そして「近くて遠きも男女の仲」。そして、「一途な女」と「気が多い男」。男と女はまったく逆で、ある意味同じで楽しいです。
ほかにも寄席の都々逸の返しつきとか。
アザのつくほど つねっておくれ それをのろけの タネにする
アザのつくほど つねったけれど 色が黒くて わからない
<コラム>
この章のコラムでは、アニメや歌謡曲の中に含まれる七・七・七・五が紹介されています。
カステラ一番 電話は二番 三時のおやつは 文明堂
犬は喜び 庭かけまわる 猫はこたつで 丸くなる
もう文章読むだけで、頭の中で音楽が流れ出します。何十年たっても頭の中に刷り込まれているのは七・七・七・五のせいなのか…恐るべし。ここで紹介される七・七・七・五を読んで、是非頭の中で歌が止まらない!を体験してほしいと思います。
第二章:飲食足りて礼節を知る
食事に食後の一服まで、とくにお酒にまつわる都々逸が多数紹介される章です。酒が出てくる句はストレートですよね。
酒に酔うまで 男と女 トラになる頃 オスとメス
しかし、これはどうですか?
行きに寄ろうか 帰りに寄ろうか ならば行きにも 帰りにも
紫文さんはこの句が呑み屋に書いてあったと語っています。たしかにそうなるとお酒の都々逸ですね。これを書いた呑み屋に完敗(乾杯?)です。
ほかにもこんな都々逸。不勉強にして私は知りませんでした。
しめじ松茸 舞茸えのき 怖いきのこは 首っ丈
<コラム>
この章のコラムでは寄席の都々逸が紹介されます。
かわいそうだよ ズボンのおなら 右と左に 泣き別れ
この句は落語の仲だけでなく、「ちびまるこちゃん」にも登場するそうです。
第三章:楽は苦の種、苦は楽の種
この章のテーマは「夫婦」です。前途洋々から前途多難まで多数取り揃えてございます。さて、これらの都々逸。どっちがいいですか?
一人笑うて 暮らそうよりも 二人涙で 暮らしたい
一人涙で 暮らそうよりも 二人笑うて 暮らしたい
上の方は女性が唄って、下の方は男性が唄うと想像すると、なかなか感慨深くなってきます。女は苦労の覚悟を決め、男は女を幸せにする覚悟を決める。いいじゃないですか!?
<コラム>
この章のコラムは寅さん。
けっこう毛だらけ 猫灰だらけ 尻のまわりは クソだらけ
あなた百まで わしゃ九十九まで 共にシラミの たかるまで
第四章:今日から役立つ!御教訓都々逸
人生に役立つ!かもしれない都々逸の紹介です。人のふり見て 我がふり直せ 人は我が身を 見る鏡
「我がふり」を治せる人は「できる人」。「我がふり」を治せない人は、言葉を知っていても治せない。なぜなら、たいていの人は自分はそこそこ「できる人」だと思っているから。だってそう思わないと生きていけないから。と紫文さんは解きます。耳が痛いですね。
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