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『26文字のラブレター』(遊泳舎/いとうあつき)感想レビュー 川嶋あいのオリジナル都々逸も収録された現代解釈付きの都々逸本

2020年11月15日日曜日

都々逸 本の感想

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『26文字のラブレター』


2019年12月6日発行の比較的新しい都々逸の本「26文字のラブレター」(遊泳舎(編集), いとうあつき(イラスト))。
26文字のラブレター

表紙


表紙の装丁は海とカクテルをモチーフにしたイラストに銀の箔押しが光ります。恋に揺れる心を表現している淡い感じが素敵です。

内容


「26文字のラブレター」には恋にまつわる60の都々逸が収録されています。「恋に落ちる」「恋に破れる」「恋に溺れる」「恋に笑う」「恋こがれる」「恋に狂う」の6つのテーマに沿って分類されています。

それぞれの都々逸に解説とそれに似合う美しいイラストが添えられています。解説は短めで強い主張はなく、都々逸を読んだ時の自分の感情を妨げない配慮がなされているように感じます。

各テーマの中で素敵な都々逸1句(説明文は私の感想)をご紹介します。

・恋に落ちる


いくど逢っても嫌いはきらい 初対面でも好きは好き (亀屋忠兵衛)

会っても会っても好きになれない人っていますよね。ステイタスの事は忘れて好きになれない人は止めてしまいましょう。恋する理由なんてありません。初対面で居心地がいい、もっと会って話がしたい、そんな恋ができると素敵です。

・恋に破れる


惚れさせ上手なあなたのくせに 諦めさせるの下手な方 (詠み人知らず)

悪いところ含めあんなに好きだったのに。ぜんぶ許せた。それなのに破れてしまった恋。どうやったら諦められるの?未練を断ち切りたいのに、ちょっと優しくされると心が揺らいでしまう。

・恋に溺れる


諦めましたよどう諦めた 諦めきれぬと諦めた (都々一坊扇歌)

他に好きな人がいるかもしれない。一緒にいたら苦労するかもしれない。不安な気持ちはあるけれど、好きなものは仕方がない。人間あきらめが肝心。好きをつらぬこう。

・恋に笑う


惚れた証拠にゃお前の癖が みんな私の癖になる (詠み人知らず)

癖がうつるほど相手を見続けるほど好きな気持ち。ふとした瞬間の自分の動作があの人と同じなことに気づいてちょっと笑ってしまう。

・恋こがれる


君を待ちわびさびしい雨に うちにいてさえぬらす袖 (詠み人知らず)

会いたい。早く会いたい。でも会えない。今ならLineが来ない、既読になったのに、なのかもしれません。待って待って待って。切なくて苦しくて涙が出てきてしまう。

・恋に狂う


あの人のどこがいいかと尋ねる人に どこが悪いと問いかえす(詠み人知らず)

恋は盲目。あの人は止めておいた方がいいんじゃないって友だちに言われてもやめられない。好きなんだもの。私だけがあの人の良さを知っているの。だけど、その恋、終わった後に思い返したら、意外と自分でも「どこがよかったの」って思ってしまいがち。

スペシャルコンテンツ


「都々逸を詠む」というコンテンツで、4人の著名人のコラムと作ったオリジナル都々逸が掲載されています。各人の個性あふれる今どきの都々逸を楽しむことが出来ます。

私は4人の中で伊波真人さんの都々逸が一番好きです。「恋よ」「来いよ」で掛けられた句になっている言葉の巧みさ、男らしさに惹かれます。

・シンガーソングライター 川嶋あい
2003年にI WiSHのボーカルとして「明日への扉」でデビュー。代表曲は「My Love」「大丈夫だよ」「とびら」など。「旅立ちの日に…」は卒業ソングの定番として人気がある。


・歌人 伊波真人
早稲田大学在学中に短歌の創作を始める。2013年「冬の星図」で第59回角川短歌賞を受賞。著書に『ナイトフライト』『エンドロール』などがある。雑誌、新聞を中心に、短歌、エッセイ、コラムなどを寄稿。関心領域は、音楽、映画、漫画などのカルチャー全般。ポップスの作詞も行う。


・作家 わかつきひかる
近所の若妻をモデルに描いた官能小説でデビュー。フランス書院美少女文庫で歴代一位の売り上げを出す。別ペンネームを含めて著書150冊。2001年ナポレオン大賞授賞、2007年幻冬舎アウトロー大賞特別賞授賞など。『ニートな彼とキュートな彼女』が2014年に「世にも奇妙な物語」にて映像化される。


・シンガーソングライター ボンジュール鈴木
エレクトロポップを軸にボーカル・作詞作曲・編集を一人で行うシンガーソングライター。アニメ「ユリ熊嵐」の主題歌『あの森で待ってる』を担当するなど、数々のアニメや映画の主題歌のボーカルや楽曲提供を行っている。


いとうあつきのイラスト


「26文字のラブレター」の特長の一つでもある美しいイラストは、いとうあつきさんが担当しています。現代解釈を織り交ぜて表現したイラストになっており、いとうあつきさんの淡い色合いが恋に揺れる世界観にあっています。

例えばこの都々逸。

飲んだお酒の回らぬうちに 早くききたい胸のうち (虎石)

添えられたイラストは、夜のグラスに浮かぶ氷の上でバレリーナのように踊る女性。そしてそれを見守る男性。焦らす女と待つ男。焦らし焦らされる甘い時間。もう心は決まっているのに。この時間をもう少しだけ楽しみたい。この後、素敵な夜が待ち受けていることを予想させる絵。まるで都々逸のように、結論をはっきり言わなくても一瞬でそう思わせてくれるイラストになっていると感じます。

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