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「夏井いつきの 日々是「肯」日(ひびこれこうじつ)」TBS系「プレバト!!」俳句コーナー夏井いつきさんの俳句とエッセイを写真と共に楽しむ本

2021年1月13日水曜日

俳句 本の感想

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夏井いつきの 日々是「肯」日(ひびこれこうじつ)

2020/5/13発刊の「夏井いつきの 日々是「肯」日(ひびこれこうじつ)」(夏井いつき/清流出版)です。
夏井いつきの 日々是「肯」日(ひびこれこうじつ)

内容

春夏秋冬、新年に分け、夏井いつきさんのエッセイ、俳句と写真家たちの写真、で構成された本です。

はじめの言葉を引用します。俳句に人生を捧げている夏井いつきさんらしい文章となっています。
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この本は、俳句と共に生きる私の「喜びの遊び」を綴ったものです。人生に起こる出来事を、是は是とし、非は非として受け入れる。全ては俳句のタネだと腹を括る。そこから新しいものの見方が生まれてくるのだと、身をもって信じております。
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ここで使われている「喜びの遊び」とは、エレナ・ポーター作「少女パレアナ」が亡き父から教えられた、どんな状況であっても喜べることを探す遊びのことを指しています。今風にいうと「よかった探し」のことですよね。夏井いつきさんは、自身の人生が俳句によって支えられる経験をしたとき俳句は「喜びの遊び」だったのだと強く実感されるそうです。


続けて俳句のページが始まります。見開きページに一つの俳句とそれに沿う写真が一枚。そして次の見開きページにエッセイと季語の説明が載せられています。

春は9句、夏は13句、秋は5句、冬は7句、新年は2句。その中で素敵だと思った俳句をご紹介します。

春: 花びらへ亀浮き上がりくるゆらぎ

季語は花弁(はなびら)、晩春。「花」の傍題。「花」は「桜」を指すものの、「桜」が肉眼で見た植物そのものなのに対し、「花」は心にうつる華やかな姿に重きが置かれる季語で広がりを感じさせます。

ここのエッセイで、夏井いつきさんは、退屈な「待つ」という時間が俳句によって意味のある遊びの時間になりえると語っています。桜咲く公園で人を待ちながら作った俳句が上記のものだそうです。人を待つことも日々是肯日。

小さな俳句のタネを拾うことの愉快さ、隙間の時間を楽しみに変えることで、毎日を楽しいものにする。肯定の毎日。もちろん楽しい事だけでなく、悲しいことも辛いことも受け止める懐の広さはそれも肯定の一つ。そんな毎日を送りたいものです。

夏: 蜥蜴走る尾をきんいろの影として

季語は蜥蜴。エッセイでは、俳句と科学は近いと語られています。俳句には数学のように公式があり、さまざまな型を覚えて反復練習をする。また、理科のように観察し、その記録を取るかのように俳句を作るのです。

そう考えると、学生時代にしてきた勉強も無駄ではなかったと感じられます。数学なんて、理科なんて、大人になって役に立つの必要なの? そんな疑問など一蹴してしまえる人生の深み。数学で培った反復に理科で養った観察力。すべてが身となり人生となり俳句となる。そう思うと大人になった今でも勉強を続けていくことは楽しいと思えるのです。


ほかのエッセイでも面白いのがありました。俳句をするまでは、ただの雨だったのに、俳句をはじめて、「時雨」などの雨の名前を知ることにより、雨の色や表情が違って見えてくると書かれています。自然を愛する日本らしく、自然のものには細かく名前が付けられ区別されていますよね。知らなければ「雨」というたった一つのものでしかないのに、知ることで、複数の「雨」になる。季語を味わうことの豊かさを感じます。

また、「俳人にとって生憎のお天気はない」と言われるように、どんなお天気だったとしても、それの名前と季語を知り、情緒を楽しむことが出来ます。常に自然を愛で喜ぶこと。何が起こってもひとまずそれを肯定する。日々是肯日。

そんな前向きで俳句を愛する夏井いつきさんの日々是「肯」日が詰まった本です。

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